青梅しかない時の梅干しの作り方
今回は、青梅から作る自家製梅干しについて、レシピや注意点もまじえてご紹介します。
梅酒や梅シロップの材料と思われがちな青梅ですが、追熟の過程も楽しみつつ作った梅干しは、
きっと格別なおいしさです。
- ●しっかりと追熟させてから天日干しを行いましょう。
- ●青梅は梅酢が出にくいので、梅酢が少ないときは市販品を追加して。
- ●梅酢を多く出すためにも塩分高めで漬け込みましょう。
青梅を用いて梅干しを作る際には、必ず「追熟」を行いましょう。黄色くなり、香りがのぼってきたら、多めの塩で漬け込んでください。梅酢の量を確認して、カビの発生を防ぎましょう。天日干しの際は果実同士がくっつかないよう、間隔をあけてください。
石神邑おすすめの梅干し
なぜ梅干し作りには青梅ではなく
完熟梅を使うのか?
いくつになっても「青梅街道」を「あおうめかいどう」と読んでしまう方、挙手をお願いします。
はい、本コラム担当者である私が、そのひとりです。
さすがに声に出しては言いませんが、「青梅街道」の文字を見かけるたび、心の中では「あおうめ」とつぶやき、大都会の車道を無数の青梅たちがごろごろ転がっていくイメージまで組み立てます。
「おうおう! こちとら、あおうめ一直線だぜ」と爆走する脳内青梅たち。
妄想はさておき、今回は「青梅で梅干しを作る」について掘り下げていきます。
本コラムでも過去に「梅干しの作り方」を紹介しましたが、その際は「黄色く熟した梅」の使用を想定していました。
そもそもどうして梅干し作りには「完熟梅」が適しているとされるのでしょうか。
理由のひとつは、ふっくらやわらかく漬けあがるから。梅の実が熟していくにつれて、皮がやわらかくなり、食感もよくなるのです。
もうひとつの理由は、完熟梅からは梅酢がよく出るため、カビなどの心配が少なく、失敗しにくいことが挙げられます。
青梅で梅干しを作ることも可能ですが、完熟梅を用いたものより硬めになります。
また、梅酢のあがりが少ないので、漬けているあいだ空気に触れる面が広くなり、カビなどのリスクが高まることも難点でしょう。
できるだけリスクを避け、やわらかい梅干しを作りたい、ということであれば、やはり完熟梅がおすすめです。すなわちそれが「青梅ではなく完熟梅を使う理由」です。
しかし、しかしですよ。青梅がたくさん手に入ったとき、あるいは梅酒やシロップのため用意した青梅が余ってしまったときなど、こう思うかもしれません。
これはもう、青梅で梅干しを作るしかない!
そんな「あおうめ一直線」な局面に備え、今回は「青梅での梅干し作り」について詳しく紹介していきます。
と、勢いよく宣言しましたが、やはり「青梅のまま」は難しいので、まずは青梅を追熟させるところからスタートしましょう。
青梅も追熟させれば梅干し作りに使える
「追熟」とは、収穫した果実などを一定期間食さず置いておくことを指します。そうすることで甘みが増したり、果肉がやわらかくなったりするので、古くから実践されてきました。
身近なところでは、バナナやキウイフルーツなどは追熟する人も多いのでは。
追熟の方法は、基本的には常温で数日放置しておくだけ。
冷蔵庫に入れてしまうと追熟が進まないのですが、その性質を利用して、すぐには食べないフルーツを野菜室に保存し、食べる数日前に常温に出して追熟を進めることが可能です。つまり、自分で食べごろを調節する、というわけです。
室内の温度が高すぎる、もしくは低すぎると追熟がうまくいかないこともあるので、ご注意ください。
青梅の追熟方法
追熟は、風通しが良く、直射日光のあたらない、涼しい場所で行ってください。
青梅を袋や箱などに入れたままで追熟を行わないようご注意を。果実を密集させたまま追熟させると、追熟にムラが生じたり、カビが発生するおそれもあります。
追熟させる際には、盆ざるなどに新聞紙を敷いて、青梅同士でくっつかないよう間隔をあけて並べてください。また、青梅に水分がある場合は、ふきんなどでやさしく拭き取ってあげましょう。
室内の温度にもよりますが、1〜4日ほどで黄色く熟してきます。あわせて、甘い香りが漂ってきます。
追熟が進みすぎると果皮が破れてしまうことがあります。追熟させている間は、毎日の観察を忘れないようにしましょう。
青梅での梅干しの作り方
追熟を終えたら、いよいよ梅干し作りのステップへ進みます。今回は塩分18%で設定していますが、その理由については後ほどお伝えします。
- ●青梅(追熟したもの)/1kg
- ●粗塩/180g
- ●焼酎(消毒用)/少々
- ●竹串
- ●漬け込み用の容器 /3L用。金属製のものは酸や塩分に弱いので、用いないでください。ガラス、琺瑯、陶器などで、蓋付きのものがおすすめです。
- ●落し蓋 /容器と同じく、金属製のものは用いないでください。平らなお皿でもOK!
- ●重石 /2kg以上のもの。ペットボトル+水でもOK!
- ●天日干し用ザル /平らなものがおすすめ。魚干し用の網でも大丈夫です。
- ●ふきん・ペーパータオル
- ●霧吹き /消毒用の焼酎に用います。
作り方
- 梅を洗い、水気をとる。
青梅についた汚れや雑菌を落とすため、水で軽く洗ってから、一晩(または約5時間)、水に漬けてアク抜きを行います。
その後、清潔なふきん、もしくはペーパータオルなどで、水気をしっかり拭き取ってください。 梅に残ったヘタは、竹串などを用いて、やさしく取り除きます。 最後に焼酎、もしくは消毒用アルコールを梅に吹きかけてください。 - 容器を準備する
霧吹きを使って、容器や蓋などに焼酎、もしくは消毒用アルコールを吹きかけて消毒します。
すみずみまで消毒したら、容器の準備完了です。 - 塩漬けする
まずは塩を1/3ほど取り分けます。今回は180gなので、60gを取り分けておきましょう。
次に、消毒済みの容器に「梅→塩→梅→塩」と交互に入れていきましょう。
梅をすべて入れてしまったら、取り分けておいた塩60gを上からまぶします。
塩は、結晶が粗く、にがり成分を含む「粗塩」がおすすめ。精製塩は梅干し作りに不向きです。
- 重石をする
梅と塩を容器に詰めたら、中蓋をして、その上に重石を置きます。重石がない場合は水を入れたペットボトルで代用可能です。 ただし、ペットボトルを使う際は梅にラップをかけ、その上に置くようにしてください。できるだけ梅が空気に触れないようにするためです。 重石を置いたら、ほこりがかぶらないよう容器に蓋をするか、蓋がなければラップなどで上部を閉じて、その状態で冷暗所に保管します。
- 梅酢があがる
塩に漬け込んだ梅から梅酢が出てきます。これを「梅酢があがる」といいます。 梅酢は腐敗を抑えるのに役立つものですが、漬け込みから4〜5日程度経っても梅が梅酢に浸かっていない場合、市販の梅酢を追加してください。
- 天日干しする
およそ1ヶ月漬け込んだら、梅を容器から取り出し、天日干しを始めましょう。梅雨明けの時期に始めるのがおすすめです。 晴天が3〜4日見込まれる期間に、風通しと陽当りのよい場所で、盆ざるなどの上に間隔を開けて並べて干してください。 梅の実にまんべんなく陽光があたるよう、ときどきひっくり返すのも忘れずに。 干し上がった梅は保存容器に入れて、お召し上がりください。 また、容器に残った梅酢も天日干ししましょう。梅から出た酵母菌の繁殖を抑えるためです。
天日干しすると、梅とざるがくっついて果皮が破れやすくなるので、朝方の少し湿気を持ったころあいにひっくり返すのがおすすめです
青梅を漬けるときの注意点
青梅を漬ける際に気をつけていただきたいのは「重石を梅の重量の2倍以上」「塩分は最低でも15%以上」にすること。いずれも梅酢をできるだけ多く出すための目安です。
先述のとおり、梅酢は腐敗を抑えるために必要です。梅が梅酢に浸かっていないと、カビの発生の危険性も高まります。
また、梅酢を早くあげるためには、漬け込みの最初に少量の梅酢を入れておくという手法も有効です。
毎年漬ける方は前年の梅酢をとっておいて、新しく漬ける際に容器の底に梅酢を入れておくと、塩が早く溶け、梅酢が早くあがり、失敗の可能性も低くなります。
梅が梅酢に完全に浸かったら重石を軽くしてあげましょう。そうすることで、梅の「つぶれ」が軽減されます。
青梅で作る梅干しまとめ
青梅を用いた梅干し作りの解説、いかがでしたか。
一般に、青梅は酸味が強く、梅シロップや梅酒に用いられることが多いのですが、青梅から追熟を経て作る自家製梅干しは、完熟梅を用いたものや市販の品とは違ったおいしさを楽しめるかと思います。
季節は限られますが、石神邑でも穫れたての青梅を販売しております。
※2024年は雹被害に加え、稀に見る不作のため青梅の一般販売を行っておりません。
また、昔ながらの梅干しを味わいたいという方には、石神邑自慢の梅干しである3種類の白干梅もご用意しております。
お弁当やおにぎりに使いやすい白干小梅。石神邑の独自栽培法である香壌栽培で育てた白干梅。化学合成農薬・化学合成肥料・除草剤などを一切使わずに育てた有機白干し。シンプルながら奥深い味わいを、ぜひお試しください。
しょっぱさや酸っぱさが苦手という方には、本コラムの過去回で「塩抜きの方法」や「はちみつ梅干しの作り方」も紹介しているので、ご参考になさってください。